今日は、concanが考える「『電通鬼十則』と『責任三カ条』から、日本社会が抱える"闇"」について考えてみます。
世界の「電通」(2兆円企業)と言われている広告代理店 最大手の電通は、「Dennote」(デンノート)と呼ばれる社員手帳に、社員の心がまえを記載しています。そして この手帳から あの有名な「電通鬼十則」が削除されて、はや 4年が経ちました。実は、この「Dennote」から伝統ある"言葉"が削除されたのは、これが 初めてではありません。
1987年に削除されたのが「責任三ヵ条」です。
それまで『Dennote』には「経営理念」の次に「電通鬼十則」と「責任三ヵ条」が記載されていました。この「責任三ヵ条」は、「電通鬼十則」が定められた、1951年の2年後、1953年に発表されています。これもまた、電通 第4代社長であり、「中興の祖」「広告の鬼」と呼ばれた「吉田 秀雄氏」によるものです。吉田 秀雄氏が書いた「電通鬼十則」は、電通マンの行動規範として広く知られていますが、これに 追記された「責任三ケ条」も強烈な教えです。今回は、この「責任三カ条」について、今の時代に照らし合わせて、深堀りしたいと思います。
*吉田 秀雄(1903.11.9~1963.1.27)
福岡県北九州市(小倉)出身
それでは、「責任三カ条」を紹介します。
【責任三カ条!】
■1.「命令、復命、連絡、報告は、その結果を確認し、その効果を把握するまでは、これをなした者の責任である。
その限度内に於ける責任は断じて回避出来ない。」
■2.「一を聞いて十を知り、これを行う叡智と才能がないならば、一を聞いて一を完全に行う注意力と責任感を持たねばならぬ。一を聞いて十を誤る如き者は、百害あって一利ない。
正に組織活動のガンである。削除せらるべきである。」
■3.「我々にとっては、形式的な責任論はもはや一片の価値もない。我々の仕事は突けば血を噴くのだ。我々はその日その日に生命をかけている。」
伝説の元電通マンとして知られる「柴田 明彦氏」の著書「ビジネスで活かす電通『鬼十則』」(朝日新聞出版社)の中で、彼は、「責任三カ条」について、こんなことを書いています。
「私は『鬼十則』以上に、強烈な"言葉"だと感じた。責任を明確化した(1)はともかく、(2)の『一を聞いて十を誤る如きものは百害あって一利もない。正に組織活動のガンである。削除せらるべきである。』は、身震いする"言葉"だ。(3)の『われわれの仕事は突けば火を噴くのだ。われわれは その日その日に命をかけている。』もだ。特に、人間に対して『削除』という"言葉"を使っているのは印象的だ。」
引用元である"伝説の男"と呼ばれている元電通の「柴田氏」の他の本にも「削除」という"言葉"を批判しているものがあります。この"言葉"は、上の世代の電通マンの「共通言語」だったのでしょう。後に「漫画・電通鬼十則」として書籍化されたものにも登場しています。
このように、電通には「鬼十則」以前に、社員手帳から「削除」された"言葉"があったのです。これに比べると、「鬼十則」は「5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。」以外は、だいぶ マイルドな表現になっています。この、よく問題とされる「5つ目」の項目も、表現は過激ですが、内容は 高い「目標達成マインド」を説いたもので、「殺されろ」と言っている訳ではありません。問題なのは、この"言葉"の本質を伝える語り部が 「電通社内」に少なくなっていったのだと思います。要は"言葉"だけが、社内外に 一人歩きしていったのです。
そして、この「鬼十則」は、日本の各企業から"マネ"されています。また、どの企業の「ビジョン」や「ミッション」のステートメントにも高い目標達成意欲が触れられています。
「鬼十則」は、かなり 叩かれましたが、同じような考え方をした企業は、日本には まだまだ 多いと思います。
あの「電通の労働時間・環境問題」は、大手広告代理店ならではの特殊性もありますが、広告という『仕事』の範囲が明確ではなく、総合職ならば 誰もが「昇進や昇格」を目指して、競い合う日本の企業・社会の問題も大きいと思います。
新人ならではの、研修から雑務から 何から何まで やるという問題や、仕事の量が人を成長させるという論理のもと、丸投げされてしまう問題もあると思います。
そして「クライアント」に振り回されるという問題もあります。これは、大手広告代理店には"在る在る"です。やはり 他の企業にも関連することで、クライアントから、金曜の夕方や夜に、「資料よろしく」と言われる状態がよくあります。
ブラック企業化を促進するのは、クライアントだという問題もあるのです。
また、電通では あの問題の後 22時以降は、社内の電気は消され、取引先との"やり取り"も禁止されましたが、クライアントからは「電通の強みが失われた!」と言われています。
それでは「仕事」にならないので、社外で仕事をし、携帯でクライアントと連絡を取っているのが、現状です。
日本の企業・社会の"闇"がそこにあると思います。
「電通鬼十則」や「責任三カ条」の批判によって、電通の労働時間・環境問題が改善されたとしても、「日本の企業・社会」の現状や、「クライアント」の問題から、根本の問題は解決せずに、今度は 電通下請けの「制作会社」に 全ての"しわ寄せ"がいき、もっと 深刻な問題が「制作会社」におき、敷いては 広告業界全体が"疲弊"してきています。だからデジタルテクノロジーの発展も付加され、広告代理店が淘汰される時代が直ぐそこまで来ているのです。
◎と言うことで…
「電通『責任三カ条』の本質とは?」と題して、書いてきましたが、私は、「電通鬼十則」も「責任三カ条」も全否定派ではありません。なぜなら 私自身が 広告業界に30年いて 電通の下請けの「制作会社」出身だからです。
どちらかと言うと「I love dentsu」です。
私にとっては「電通さん」なのです。仕事を通して 様々なことを教えて貰いました。
私は、長い間(20年間) 東京 大阪 福岡で、電通さんの「ブレーン」として、プレゼンに次く、プレゼンを経験しました。
所謂 「1.000本ノック」を受けていたのです。
徹夜も相当やりましたし、確かに キツかったのですが、それ以上に 達成感を経験させて貰いました。この厳しい環境の中で、私は『モノ事』を創り上げる、これからの厳しい時代を生き抜く「基礎力」を身に付けさせて頂きました。
実は、"感謝"しかありません。
この『労働時間・環境問題』を解決する為には、「バランス」だと思います。それは、一緒に戦ってくれる「仲間」がいて、バランス感覚を持った、人の気持ちが分かる、全体が見れる「自分の軸(ものさし)」を持った「電通マン」がいて、初めて解決するのだと思います。所謂 発注者も受注者も「人間力」が必要なのです。もしかしたら、昔に比べて 人間力を持った「電通マン」が少なくなったのかも知れません。
例えば、常に「ゴム」は 伸びたままでは、使い物になりません。伸びたり縮んだり、しながら鍛えて、ここぞの時に「グッ~と、伸びればいいのです」所謂 「メリハリ」です。
人に 例えると、人生の中で、「がむしゃら」にやる時期も必要だということです。それは、「時間軸」1日の内で、集中(夢中)出来る時間と、「年軸」年単位(年齢関係なく、2.3年)で、"がむしゃら"にやる時期を創ることで、後の「モノの考え方」に影響するのです。
それを乗り越える為に、「仲間」が必要なのです。
●最後に、私が「電通さん」から学んだことを紹介します。
それは、様々な「プロジェクト」の立ち上げです。
企画して、決まったプロジェクトの『基本計画』、『実施計画』から、『本番に向けた推進』、『本番で使うマニュアル』の制作、そして 『本番』と、一貫して行ってきました。
このベースになるのが「基礎力」です。
私が思う「基礎力」とは…
「基礎力(10)」=「情報収集力(2)」+「分析力(1)」+「整理能力(5)」+「文章力(1)」+ 「表現力(1)(クリエイティブ)」⇒「真のコミニュケーション能力」のことです。
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